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この9作目からおいちゃんが松村達雄になります。でもおいちゃんはやっぱりおいちゃんなのでご安心を、意外なほどに違和感はありません。
マドンナは吉永小百合です。やはり、かわいいですね。
目次
あらすじ
妹夫婦の不吉な夢を見て柴又へ戻った寅さんだったが、自分の部屋が貸間になっているのにむくれ、下宿探しを始めた。が、案内されたのがとらやで、しかも手数料を不動産屋に請求されたから大喧嘩。旅に出た寅さんは金沢で三人娘・歌子、マリ、みどりに出逢い一緒に観光した。その後、柴又で三人娘に再会、それから遊びに来るようになった目元の美しい歌子に熱を上げ始めるが、歌子には好きな青年がいて、小説家の父と二人暮らしのために悩んでいた。しかし、さくらの助言で歌子は結婚を決意、寅さんはまた失恋してしまった。(C)1972 松竹株式会社〜Amazonプライムビデオ作品紹介より
マドンナ:吉永小百合
本作のマドンナは吉永小百合。当時27歳。
吉永小百合は今でも現役の女優です。そして今でも美しい。
本作では恋愛、結婚、親との葛藤に悩む20代の女性を自然に演じています。きれいで可愛いのは当然として、肉付きが良いというほどではないが、女性的なふくよかさがありとても魅力的です。
Amazonのレビューを見ていると、演技力をどうこう論じているものもありますが、、、
僕のような素人にはプロの俳優の演技力がどうなのかはわかりませんしけど、この映画を観た感想としては、どこか幸薄そうだけれども人生を前向きに生きようとする女性という設定にピッタリはまっていたと感じます
映画のみどころ
みどころをいくつか。
吉永小百合
実は僕も、本作のマドンナが吉永小百合だからという理由で今まで観ることをためらっていました。
断っておきますが、僕は決して吉永小百合が嫌いなわけではありません。テレビやビデオではもちろん、映画館で主演作を観たこともあります。
ではなぜためらっていたのか?それはおそらく先入観が邪魔をしていたからでしょう。
「吉永小百合=清純派=優等生=お嬢様」といった固定観念があり、それが自分のなかの「寅さんの世界」と融合しているのを上手く想像できなかった様に感じます。
言い換えると、それだけビッグネームだということなのかもしれません。
でも全くそんなことはなくて、吉永小百合のマドンナはかわいく、少し悲しげに、寅さんの世界にごく自然に溶け込んでいます。
二代目おいちゃん:松村達雄
TVシリーズからおいちゃんを演じてきた森川信が亡くなり、本作からは松村達雄が二代目おいちゃんとして登場します。
松村達雄は1971年公開の6作目にも町医者の役で出演しており、本作からはしばらくおいちゃんを演じ、その後また別の役で出演します。旅の一座の座長を演じている吉田義夫や、蓬莱屋や備後屋の佐山俊二と共に「男はつらいよ」シリーズに欠かすことのできない重要なバイプレイヤーです。
松村達雄は森川信より実年齢で2歳若いだけなのですが、髪の毛が黒々としていることもあり、だいぶおいちゃんが若返った印象はあります。
前任者とややタイプは違いますが、「おいちゃんはおいちゃん」といった感じでキャラクターが出来上がっており、不思議なほど違和感はありません。
特に本作ではやや下ネタ多めなところもあり、寅さんとの絡みでは僕も何度か声を上げて笑ってしまいました。
なんか面白い
言うに事欠いて「なんか面白い」とは、我ながら情けなくなりますが、でもなんか面白いのです。
上述の通り、本作はいつもよりも少し下ネタが多めです。しかし、それが「なんか面白い」の原因かというとそうではなくて、もちろん下ネタも「なんか面白い」の一つの構成要素ではあるのですがそれは枝葉の部分です。
もっと本質の部分、全体の「調子」というんでしょうか、作品のテイストがそれまでとはちょっと違います。これ以前の作品でいうと、小林俊一が監督を務めた4作目に通じるビビッドな雰囲気がありますが本作のほうがもっとずっと洗練されています。
味付けとしてはややドライ、だけどちゃんと下味はつているから旨味が足りないなんてこともなく、添えられた香りのいい七味がよくきいている。そんな印象ですね。
思わず声にだして笑ってしまったのも、そのあたりのメリハリ、緩急の差にうまくのせられてしまったのだと思います。
宮口精二
マドンナの父親役を演じているのが宮口精二です。
黒澤明の「七人の侍」で凄腕の剣客:久蔵を演じているといえばピンとくる人も少なくないのではないでしょうか。
この父親は小説家で、家庭生活に無頓着なせいで奥さんが出ていってしまった男という設定ですが、小説家らしい繊細さと社会不適合な感じがよく出ています。
男はつらいよシリーズにはこういった、存在感がありながらも後味がスッキリしているいい俳優さんたちが本当にたくさん出ています。実に良いですね。
ペプシ
ペプシコーラが協賛しているようでオープニングでクレジットが出てきます。
作中でも、まずとらやの入り口の冷蔵庫がペプシのに変わっています。それから、エンディングに登場するトラックもペプシのトラックでした。
狙い通りに刷り込まれて、僕は今、無性にペプシが飲みたいです。
キーワード
作中に登場する、気になった言葉など。
やわらかいご商売
下宿先をさがす寅さんに向かっての不動産屋の主人の言葉。
公務員や国鉄職員といった「かたい仕事」に対して、寅さんの生業であるテキ屋稼業を指しているのだが、僕はこの「やわらかいご商売」という表現をはじめて聞きました。
おそらく今では一般的でないと思いますが、当時は使われていたんですかね。もし詳しい方がいたらぜひ教えていただきたいです。
小説家なんてやる人間は一風変わっている
これは寅さんがマドンナの父親を評して言う言葉ですが、「お前が言うな」という感じで、思わず吹き出してしまいました。
寅さんのそういうところは本当に羨ましい。
銭湯
同じく寅さんが下宿を探すシーンにて。『俺は銭湯大好きだから風呂はなくても構わない』という内容のセリフがあります。
当時(1972年)の銭湯の入浴料が気になったので調べてみたら、48円でした。今(2020年)の東京都内の銭湯の入浴料は470円なので、およそ10分の1の料金です。
しかし、その前年の料金が40円なのでかなりの割合で値上がりしていたことがわかります。20%の値上がりって結構すごいですよね。
ディスカバー・ジャパン
マドンナと寅さんが出会うきっかけになったのがこの「ディスカバー・ジャパン」という、1970年から展開された国鉄による国内旅行推進キャンペーンです。
東京オリンピック・大阪万博を経て整備された国内交通網を活用すべく始まったこのキャンペーンは、それまで主流だったパックの団体旅行から少人数での個人旅行へとシフトするきっかけになりました。
ちょうど時を同じくして創刊された女性ファッション誌「an-an」「non-no」でも特集記事が掲載され、若い女性数人での国内旅行が大きなブームとなりました。
感想
まずは僕自身の食わず嫌いでこの面白い作品を今まで敬遠していた不明を反省しました。
やはり何事も自分で経験してみないとわからないですね。
またこれ以前のマドンナは、置かれた環境に自分をアジャストさせていく、どちらかというと古風な女性が多かったように思いますが、本作のマドンナは葛藤しつつもその殻を破って自分の人生を生きるという選択をします。
そこには当時の社会へのメッセージが込められているはずですし、また現代でも同じ悩みを抱えている人は多いでしょう。
きっと共感できて励まされる部分があると思います。