【映画レビュー】ゼロの焦点 1961年・松竹

新婚の夫が金沢で行方不明になり、美しい若妻がその行方を追う。という最高にドラマティックな展開です。

ネタバレなしのレビューですので安心してお読みください。

あらすじ

広告社に勤める憲一は、新婚7日目に金沢へ出張、そのまま消息を絶った。妻の禎子は金沢へ出掛け、単身捜査に乗り出すが、手がかりはつかめなかった。やがて憲一が広告社に勤める前に、巡査の風紀係だったことが判明し、事件はそれに絡んでいる模様。そして意外な事実が明るみになってくる。 野村芳太郎監督が、北陸を舞台に人間の孤独と悲しさをスリリングに描いた傑作。〜Amazonプライムビデオ作品紹介より引用

終戦の記憶がまだ新しい当時の時代背景を知らないでこのあらすじだけを読んだとしたら、この物語の核になる部分を想像することはかなり難しいでしょう。

恥ずかしながら僕も、全くわかりませんでした。

感想

感想を一言で表すと、

「腑に落ちないところもあるけれど、確かに面白い。」

です。

謎解きが腑に落ちない

犯人の動機はわかります。確かにそういうこともあるかもしれないね、と思います。

しかし、ヒロインが事件の真相に迫る過程で根拠になるのが状況証拠ばかりで、今ひとつ「?」という感じが拭えません。

「え、それで『あなたが犯人ですよね』って言っちゃう?」という印象です。しかも、犯人もそのガバガバな証拠で自分がやったと認めてしまうのはどうなの?と思ってしまう。

映画を観終わったあと消化不良だったのですぐに原作本を購入して読みましたが、意外だったのは原作と映画ではかなりストーリーが違っていることです。

原作の方が情報量が多く、真相に迫る過程での説得力はだいぶ増します。

しかしながら、最後に犯人を突き止める決め手になるのが『ヒロインのインスピレーション』というところは、一生懸命に読んだのにやや期待外れでした。

それでも面白い

しかし、それでもグイグイ引き込まれる面白さがあります。

なんと言っても、『新婚まもない夫が消息を断ち妻が行方を追う』という設定が圧倒的にドラマティックです。

人生における幸せの絶頂とも言うべき新婚であるのにも関わらず、なぜ夫は姿を消さなくてはならなかったのか?

そして若く美しい新婦は、心細い身の上でどのように夫を探して行くのだろうか?

ものすごく気になりませんか?

僕もそのキャッチフレーズにガッチリ心を捕まえられたのがこの映画を観ようと思ったきっかけです。

また舞台が冬の北陸であることも物語の陰影をより際立たせていると感じます。

季節は12月、まもなく雪に閉ざされようとしている能登の重く垂れ込めた雲、鈍色の空と海を想像すると、どうしたって物語の先行きは不吉に思えてきませんか?

さらに、悲劇の引き金となる、女たちの消すことのできない悲しい過去。

それが終戦後の混乱した時代を生き抜くためだったことも、やるせなさを一層かきたてます。

有馬稲子が可愛い

物語の重要なキーパーソンである、悲しい過去を持つ女性を演じている有馬稲子が可愛いです。

役柄上、少しうらぶれた感じを出してはいるものの、どうしても可愛さを隠すことがこできません。

主演の久我美子よりも有馬稲子の方が可愛いのに、なんで主演じゃないのか?と思っていましたが、有馬稲子が演じる役がキュートじゃないと物語が成立しないので、観終わってみれば適材適所だったのだと納得しました。

まとめ

原作本のあとがきに、「推理ものとしては疑問符がつくが、物語としては非常に面白い」と行った内容が書いてありますが、僕も同意見です。

映画も同様で、推理ものを期待すると物足りないかもしれないけど、物語として見たときにはこの上なくドラマティックでグイグイと引き込まれていくはずです。

ゼロの焦点

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