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色々と珍しい演出もあるシリーズ7作目は、いぶし銀のバイプレイヤー達に支えられた、それはそれは優しい物語でした。
まだ観たことの人にはぜひとも観てもらいたい、隠れた名作です。
あらすじ
越後から帰ってきた寅さんは、生みの母・菊が訪ねて来たことを知らされた。再会を拒みつつ、さくらに諭されて涙の親子対面。しかしそれも束の間、結婚話で親子喧嘩になってしまった。その後、寅さんは旅先の東海地方で津軽から紡績工場に出稼ぎにきている純真な少女・花子と出会った。数日後、柴又に戻った寅さんは、とらやで働いている花子を見て大喜び。そんなある日、突然花子が寅さんのお嫁さんになりたいと言い出し、とらやは天手古舞い。そこへ花子の身元引受人が花子を引き取りに来た。(C)1971 松竹株式会社〜Amazonプライム作品紹介より
マドンナ:榊原るみ
本作のマドンナである榊原るみさんは当時20歳。圧倒的に若い、そして可愛いです。
東京出身のお嬢様なのに、津軽弁がとてもお上手です。幼い頃から雑誌のモデルやテレビ、舞台など幅広く活躍されていたので、若いながらもすでにかなりのキャリアをお持ちでした。
本作のマドンナの花子は知的障害を持つ女性で非常に難しい役だったと思うのですが、ピュアでとびきりキュートなマドンナを見事に作り上げています。
寅さんならずとも、「この子を守ってあげなければ」と感じるはずです。
映画のみどころ
いぶし銀のゲスト
本作には物語の仕上がりをぐぐぐっと引き締める、いぶし銀のゲストが登場します。
まずは寅さんと花子が初めて出会うラーメン屋のオヤジ役として登場するのが、落語家として初めて人間国宝に認定された5代目柳家小さん。
1915年生まれの戦中派で当時56歳、なんと二・二六事件に反乱軍として参加したという経歴の持ち主です。
そして沼津駅近くの交番詰めの警察官として登場するのはクレージーキャッツのメンバーである犬塚弘さん。当時42歳。
存在から生真面目で不器用そうな「おまわりさん」という感じが滲み出ています。最初は戸惑いながらも、花子のために寅さんと知恵となけなしのお金を出し合うシーンが秀逸で、僕は涙してしまいました。
田中邦衛
寅さんの恋敵、、、とは少し違いますが、花子を寅さんから引き離す役として田中邦衛さんが登場します。
当時まだ39歳とまだまだ壮年の若さ漲る年齢ながら、もうすでに誰もが知っている「ザ・田中邦衛」として出来上がっている状態で存在感は抜群です。
ストーリー上、寅さんとはすれ違いになるため同じ画面に映ることはありません。しかし二人同時にスクリーンに映るシーンも見てみたかったです。
オナラでケンカ
実際にオナラをする描写はありませんが、真面目な話の最中に寅さんが大きなオナラをしたことが原因でおいちゃんと寅さんがケンカになり、さくらが泣き出すというシーンがあります。
本人たちは真剣に考えているという設定だと思いますが、とても面白く微笑ましい良いシーンです。
「いつまでもこの人達を見ていたいなあ」と思います。
寅さんを探しに行くさくら
本作のラストではさくらが青森まで寅さんを探しに行き、バスの車中でまさかの再会を果たしたところでエンディングとなります。
慣れない土地で寅さんの身を案じながら旅をする不安げな様子から、寅さんとの再開で緊張が一気にほぐれた状態への表情の変化を是非見ていただきたい。
さくらの気持ちが痛いほど伝わってきます。
キーワード
集団就職
映画の冒頭、新潟の越後広瀬駅から集団就職のため上京する中高生を激励するシーンがあります。ドキュメンタリー風の演出とあいまって強いメッセージ性を感じます。
集団就職は昭和30年代から40年代にかけて、若者を食べさせることができない貧しい農村地域と低コストな労働力を必要としていた都市部の需給をマッチさせる形で行われ、高度成長期を支えた要因であったと評価されています。
帝国ホテル
寅さんにのお嫁さんを見るために上京した母親のお菊さんが泊まっていたのが帝国ホテルです。
本作公開の前年である1970年3月に客室数700超の新本館(現在の本館)がオープンしており、お菊さんは600番代の部屋に宿泊していますので、できたばかりの新本館に部屋をとっていたであろうことがわかります。
寅さんはお菊さんの宿泊している部屋に入るなりトイレに入るのですが、どうやら間違えてお風呂(バスタブ)で用を足してしまったようで、、
バス・トイレがくっついた洋室がまだ珍しかった時代を誇張して表しているシーンだと感じます。
感想
観る前は「知的障害があるから純心なマドンナ」みたいな描かれ方だったら嫌だなと、実はほんの少し構えていました。
でもそんな心配は無用でした。
もう50年も前の作品ですので、今の感覚からすると配慮が足りないと感じる表現もあるかと思いますが、しかしそこは本質ではありません。
優しくて心細い、大切な人を想う気持ちが込められた素敵な物語です。シリーズの中でも隠れた名作といえると思います。