【映画レビュー】男はつらいよ フーテンの寅(第3作)1970年・松竹

男はつらいよの第3作目の監督は森崎東(あずま)、その他多くの山田洋次の監督作とはテイストが違っていて非常に新鮮です。1970年1月公開の作品。

あらすじ

お見合いを承諾した寅さんが相手の女性に逢ってびっくり、知り合いの旅館の従業員・駒子だった。駒子が恋人の腹いせに見合いをしたことを知った寅さんは二人の間を取り持ち、結婚式を挙げさせた。それから一ヶ月、湯の山温泉で旅館の番頭をやっていた寅さんは、旅館の経営をいっさい切り盛りしている未亡人・お志津に淡い慕情を寄せていた。そのお志津のために、お志津の弟・信夫と芸者・染奴の間も取り持った。しかし、お志津には心に決めた人がいることを知らされ失恋してしまう。(C)1970 松竹株式会社〜Amazonプライム作品紹介より
男はつらいよ全50作のうち、山田洋次監督作でない作品は2つだけ、そのうちの1つがこの第3作目「男はつらいよ フーテンの寅」です。
三重県の湯の山温泉をメインの舞台として物語が進行するため柴又でのシーンは少なめで、さくらの登場シーンがほとんどありません。

マドンナ:新珠三千代

本作でマドンナ役を演じるのは奈良県出身の元タカラジェンヌ、新珠三千代さん。1930年の生まれなので当時40歳、脂の乗り切った女の盛りといった感じで、上品ながら非常に色気がありお美しいです。

新珠さんは宝塚引退後25歳で日活から映画デビュー、27歳のときに東宝に移籍し看板女優の一人として数多くの映画やドラマに出演しています。

映画のみどころ

本作品のみどころをいくつかご紹介しましょう。

森崎東の演出

当たり前なのでしょうが、同じ物語でも監督が違うと雰囲気が全く違ってくるのだなと感心しました。

人間の心の機微をじっくりあぶり出そうとするのが山田洋次監督だとするならば、もっとアクティブでわかりやすい活劇に仕上ているのが森崎東監督、そんな印象を受けました。

悠木千帆=樹木希林

「悠木千帆」と聞いてすぐにピンとくる人はそう多くないと思いますが、実は悠木千帆とは改名する前の樹木希林さんの芸名でして、当時27歳だった樹木希林さんがこの作品に出演しています。

樹木希林さんは20代の頃から老女の役を演じることが多かったのですが、この作品では珍しく年齢相応の若い女性の役を演じています。若いです。

さくらが天使

柴又のシーンがあまりないため、さくらの出番が少ないのですが、、本作でのさくらは「天使か」と思うほど可愛らしいです。

物語前半の山場、一悶着起こした寅さんがまた柴又を去ろうとする場面で、さくらが寅さんを「お兄ちゃんも悪気があったわけじゃないもんね?」と慰めるのですが、この時のさくらの可愛さったらありません。

男はつらいよシリーズには美しいマドンナ役がたくさん出てはくるのですが、、、

寅さんにとっては妹であり母であり、時には想い人でもあるさくらがやっぱり永遠のマドンナなんだろうなと実感しました。

香山美子の魅力

寅さんが住み込みで働くことになる湯の山温泉の芸者として香山美子さんが出演していますが、非常にお美しく、なんといっても華があります。

香山さんが演じるのは「貞奴」という名の芸者なのですが、芸者姿もさることながら洋服姿がとても良くて、画面に登場するとついつい目で追ってしまいます。

「魔性」というほどタチが悪くないですけど、香山美子さんは抗いがたい魅力をもった方ですね。

キーワード

本作で気になったキーワードについて。

手形の期限

お隣さんのタコ社長(桂梅太郎)がよく言っている「今日が手形の期限だったの忘れてた」というフレーズに出てくる「手形の期限」について、今ではあまり馴染みがない言葉ですよね。

この場合の手形というのは約束手形のこと、商取引に関する支払についての証書ですね。「この取引に関する支払いは何月何日に致します。」という約束を保証するものとして、銀行を通して発行されます。

そして、その約束の支払を求めることができる期間は、約束した支払期日から起算して3日間だけと決められています。その期間を過ぎてしまっても債権は消えませんので支払いを求めることはできるのですが、何かとめんどくさいことになってしまいます。

つまり、タコ社長の印刷工場は納品した印刷物の支払いを約束手形で受け取っていて、ついついその期日を忘れてしまい、あやうく資金回収が覚束なくなりそうになっているということです。

小さい工場で資金繰りも大変そうですから、予定していた入金が遅れるとそれこそ従業員に給料も払えなくなるでしょう。それでいつもあんなに慌てているわけですね。

何ということのない一言かもしれませんが、中小企業の経営者の苦労とタコ社長のちょっと頼りないけれども誠実な人柄がにじみ出るようなセリフだと思います。

浮気は男の甲斐性

物語前半、知り合いの女中さんとその恋人との仲を取り持つシーンでの寅さんのセリフで、「浮気は男の甲斐性、もてない男じゃつまらないだろ」というのがありまして、、、

今、こんなことを公に発したらバッシングされそうですが、好き嫌いはあるにせよこれは本質をついた一言なんじゃないでしょうか。

人間が生物であり、自分の遺伝子を残すために行動するようプログラムされている以上はこの先も浮気は無くならないでしょう。また俗に言う「浮気性の男性」に惹かれる女性も少なくないことも事実なのだと思います。

こういった話題に興味のある方には、中野信子さんの著書「不倫」をおすすめします。

感想

「異色」と言われるだけあり、たしかにその他の作品とは毛色が違います。

かくあるべし、と原理主義的に構えてしまえば楽しめませんが、「公式による二次創作」くらいの気持ちで見れば、色々と新鮮で楽しめると思います。

いずれにせよ、寅さんはどうあっても寅さんなので、その点はご安心を。

作品詳細ページはこちら→男はつらいよ フーテンの寅

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です